せっかくリッピングをやり直すなら少しは方法を検討してみよう、と思って見つけたのがComputer Audiophile LLCが提供する記事でした。
はじめは要点だけまとめようと思ったのですが内容が面白かったので分量が多くなってしまいました。
オリジナルの記事は"Computer Aaudiophile Academy"の一部であるためか、少々学術風を気取った文体になっています。日本語で読みやすいように冗長な部分は削り編集していますので完全な翻訳ではなく抄訳です。
PCオーディオを楽しんでいる方はそれぞれ自分の方法を持っていると思いますが、リッピングに興味のある方なら楽しく読めると思います。
私が素直にタイトルをつけるとしたら「アーカイブとしてのリッピング」といったところです。
WindowsとMacの使用を想定している記事ですが、linuxを使っている方でも参考になると思います。また、後半の「方法論」でdBpoweramp CD Ripperの設定が紹介されています。
コンピュータオーディオファイル向けのリッピング戦略と方法論
by The Computer Audiophile Published on 10-29-2009 08:35 PM
Contents
序 - 戦略と方法論
オーディオファイル向けのリッピンク戦略
- ゴールの宣言
- ゴールの達成
- アーカイブ用コピー、作業用コピー、編集済みコピー
- メタデータ
- ファイルのフォーマット − アーカイブ用コピー
- ファイルのフォーマット − 作業用用コピー
- ファイルのフォーマット − 編集済みコピー
- リッピング戦略の要旨
オーディオファイル向けのリッピング方法論
- 必要要件
- ステップ・バイ・ステップ
- 終わりに
訳註と用語集
序
CDから音楽データをリッピングすること自体はとても簡単。8歳の子供でもできる。シンプルな仕事なのでコンピュータに任せておけばそれで終わりだ。
しかし一口にリッピングといってもイージーな方法もあれば凝りに凝った方法もあり実に様々な選択肢がある。ここではオーディオファイル向けの戦略と方法論を説明する。
戦略と方法論
リッピングするにあたっては戦略を考えぬき方法論を固めておくことが重要だ。確固たる戦略と方法論がなければ、あなたは時間と金を失うことになる。古いCDが正確にリップできていなかったり、なんだかわからないフォーマットになっていたり、タグのない膨大なファイルの中から音楽を探さなければならなかったり...こんなことは思慮のない人間のやることだ。 ありがたいことに、これらの落とし穴は以下の助言を読めば避けることができる。
注意:このマニュアルはソフトウェアに対するものである。ハードウェアに対しては別に述べる予定。
オーディオファイル向けのリッピンク戦略
戦略...【名詞】 重要または大きなものごとを達成するために策定される計画や政策。
コンパクトディスクの中身すべてを可能なかぎり正確にリップするためには、芸術作品の小さな欠片の保存を追求する芸術遺産保護主義者の心境になるべきである。リッピングに着手する前に明確な戦略を構築すべきだ。そして戦略を確立するためにはゴールを定めることが必要だ。リッピングのゴールとはデジタル保管することである。
デジタル保管とは?
デジタル保管の定義は長期保存、デジタル情報のためのエラーフリーなストレージであり、ユーザーが必要とするタイムスパンにわたって保全されなければならない、ということである。この定義をリッピングにあてはめてみよう。
A.長期保管: 国際標準規格ISO 14721(OAIS参照モデル)によれば長期保管とは無期限を含むものである。
B. エラーフリー: エラーフリーなストレージとは、CDをエラーを起こさないメディアに正確にコピーするということである。正確なリッピングに関連する用語としては、セキュアリップ、アキュレートリップ、エラー補正などがある。
C. 情報を取り出す: 字義的にはストレージにあるリップしたファイルをコンピュータが読むということだ。さらに解釈を拡げれば、オーディオ情報を引き出し再生するということになる。現在使っているファイルフォーマットが将来もサポートされ得るのか考えるべきだ。
D. 利用する: これは先に述べた情報を取り出すということでもあるが、メタデータを活用してどのように特定のファイルやアルバムを見つけ出すのか、ということにも関わってくる。この場合「活用する」は「説明する」と同義語だ。似たようなデータの海からメタデータはアルバム名やアーティスト名、トラック名等々を説明してくれる。
E. タイムスパン: これは人によって異なるだろう。ソフトやハードの仕様が変わってファイルが使えなくなるまで、あるいは長期保管に適した新たなフォーマットが出現しそれに移行するまで、と言えるかもしれない。
デジタル保管と密接に関連するのはデジタルな持続可能性である。インフラを構築し、相互運用性を意識してフレキシブルにアプローチすることは、休むことのできない作業である。デジタルな持続可能性は現在の活動に基づいており、現在の活動が将来におけるアクセスと有効性を高める。
このドキュメントのコンテクストにおいて、フレキシビリティ、相互運用性、アクセス、将来における有効性、といった言葉はキーコンセプトである。この戦略と方法論のゴールはこれらのコンセプトを具体化したものとなろう。
学者めいた定義付けをしてしまったが、リッピングは音楽コレクションを楽しむためのものだ。アルバムアートを楽しんだり、ずっと忘れていた曲にすばやくアクセスすることができたり、すばらしい再生音で聴くことができたりする。なによりもプレイリストは重要だ。先に述べたゴールはこういったデジタル芸術遺産保護主義者である皆様のニーズにお応えするものである。
ゴールの宣言
ゴール: 信頼できるストレージに、将来性のあるフォーマットで、必要であればメタデータ付きで、CDを正確にリップする。
俗に「はじめが肝心」というがリッピングにおいてもこれは同じである。
ゴールの達成
ゴールを達成するための戦略として、音楽コレクションのコピーを複数作ることが必須である。私はピーター・コープランドの、時代は古いが今日でも有効なコンセプトを適応した。「アナログサウンドのレストア技術マニュアル」はオーディオファイルのニーズにもフィットする。音楽コレクションについては少なくても2つはコピーを作るべきだ。場合によっては4つほど作成することになる。
1. オリジナルのCDは可能なかぎりそのまま保管する。
2. CDからリップし、標本「アーカイブ用コピー」としてこれから別のコピーを作成するためだけに使い、再生には使わない。
3. CDからリップし、標本「作業用コピー」としてふだんの再生に使う。
4. オプションで「編集済みコピー」を作成する。これは音量レベルやイコライザなどの可変データを含むものである。
オリジナルのCDはそれしかない本物のレファレンスなので処分しないこと。大英図書館サウンドアーカイブの元責任者であるピーター・コープランドによると、現在のリッピング技術ではCDの完全なクローンは作れないということだ。物理的なディスクをずらりと並べるかわりにCDをリップして音楽コレクションにしようと考えている読者はがっかりするかもしれないが。
可能なかぎり正確にCDをリップすることはリッピング戦略のなかでもとくにクリティカルな部分だ。正確に、というのはCDの元々のレゾリューションである16-bit / 44.1 kHzを指す。よくきかれのは、CDから24-bit / 48 kHzのようにより高いサンプルレートにしたらどうか、という質問である。しかし16/44.1以外ではCDの正確な「アーカイブ用コピー」にはならない。
逆に16/44.1のコピーから24/48kバージョンを作ることは可能だ。技術的には高いサンプルレートからダウンサンプルすることも可能ではあるが、コンバートするにあたって数字を四捨五入することが必要であり、それはプログラムによって動作が異なるため、数学的アルゴリズムの問題を避けることができない。
さらにリッピングで注意が必要なのはセキュアリッピング機能を備えているプログラムを使うということだ。この機能によって自分がリップしたファイルと他の人がリップしたファイルのチェックサムをオンラインデータベースで比較することができる。あなたの行ったリッピングが、少なくても世界中の何人かのリッピングと一致したということである。データベースに載っていないCDに関しては、プログラムがリップが正しいと判断しトラックをエンコードしてしまう前に、たいていは何回かリップされて、結果が相互比較される。次の方法論のセクションでさらに詳しくみてみよう。
アーカイブ用コピー、作業用コピー、編集済みコピー
ミュージックサーバー経由で毎日音楽を聴くということは、iTunesやMediaMonkeyといったアプリケーションを使って、音楽ファイルと多くの時間を一緒に過ごすということだ。つまり、リスナーが誤ってファイルを削除したり、元に戻せないような操作をしてしまう機会がたくさんあるということを意味している。
この二番目のシナリオでは、たいていの場合ファイルは消えずにどこかに残っているが、ユーザーが見つけられなければ無くなったも同然である。ヒューマンエラーだけでなく、コンピュータのハードウェアも完璧にはほど遠い。ドライブは従来の回転系のものでも最新のソリッドなものでも失敗や故障がつきものだ。
こういった理由や他の様々な理由により、「アーカイブ用コピー」と「作業用コピー」を区別することが推奨される。アーカイブ用コピーには絶対に変化を加えないこと。これはオリジナルCDから作られた「正確」なレプリカである。区別することによって、音楽コレクションをブラウズしたり整理したりするときに誤ってファイルを改竄してしまうことを防ぐことができる。
このアーカイブ用コピーは作業用コピーとは別のストレージデバイスに保管すべきだ。たとえば、アーカイブ用コピーはNASに保管しておき、作業用コピーはローカルドライブに置いておく。手堅いソリューションである。読者の中にはオフサイトストレージやバックアップ用テープのような堅牢なメディアを思い浮かべるかもしれないが、これはまた別の議論にしよう。
さらにアーカイブ用コピーのロケーションに関して、ダウンロード可能なPDF形式のライナーノートと、リッピング時に生成されるリッピング結果のレポートもここに保管することをお勧めする。
作業用コピーは再生するときに使う音楽コピー標本である。もし作業用コピーに変更が加えられたとしても心配には及ばない。アーカイブ用コピーから速やかに元に戻せるからだ。最初はオーバーに感じるかもしれないが、リッピングし直す労力と時間を考えると非常に効率的なことだとわかるだろう。もし人を雇ってリッピングさせているなら金の節約にもなる。
リッピング時にファイルを複数同時につくる方法は、iTunesでも先に設定しておけば簡単にできる。
補足:アーカイブ用コピーは他のフォーマットを使う必要ができた際にも役に立つ。編集済みコピーに関しては、これは完全にオプショナルなもので読者の多くは必要としないだろう。しかし4つ目のコピーを作成しておくことは他にも役に立つことがある。
メタデータ
メタデータ...【名詞】 他のデータについての情報を提供し説明する一連のデータ。
メタデータは一般的にタグと呼ばれ、本質的にはデータについてのデータである。オーディオファイル向けのリッピング戦略と方法論において、メタデータはアルバムタイトルやアーティスト名などに関する情報の全てである。
メタデータがなければタイトルは Track01, Track02といったものになり、アルバムアートの表示もなされない可能性がある。メタデータによってユーザーは音楽サーバーのパスに素早くたどり着くことができる。アートワークやプレイリストといったアルバム全体を見ることも音楽体験の楽しみのひとつだ。
また、ユーザビリティに加えて、メタデータはリップしたデータの将来性を高めるという重要性をもっている。もしこのドキュメントに従ってアーカイブ用コピーを作ったとしても、トラック名やアルバムタイトル、アーティスト名がわからなかったら意味がないだろう。
メタデータに関しては、それをファイルに埋め込むかどうかが焦点となる。リッピング時にファイルに埋め込む方法の方がはるかに好ましい結果をもたらす。これ以外では別のファイルやデータベースに情報を格納する方法がある。後者のコンセプトをiTunesで説明してみよう。
iTunesはメタデータを埋め込むことも、別ファイルに保存することもできる。CDをAIFFへリップするとiTunesはトラック名やアーティスト名といったメタデータをファイルに埋め込む。もしそのアルバムがiTunes上で販売されているものだったら、関連するアルバムアートは自動的にダウンロードされるが、これはAIFFに埋め込まれるのではない。
iTunesはアルバムアートを分かりにくいディレクトリに保存するので将来的に取り返しのつかないことが起こり得る。iTunesでもアルバムアートをAIFFファイルに埋め込むことはできるが、これはユーザーが手動でトラックやアルバムのプロパティを呼び出して行わなければならない。
埋め込み方式と関連ファイルを作成しておく方式との違いは、音楽ライブラリが崩壊して、それを修復したり再構築したりするときになってはじめて大きな問題だと気づくだろう。埋め込み方式ならメタデータは音楽ファイルと共にあるので、ユーザーが余計な手を加える必要は生じない。しかし別ファイルに収めたメタデータは永遠に消えてしまう。この例でいくと別ファイルであるアルバムアートはどこかに無くなってしまうのだ。
ファイルのフォーマット - アーカイブ用コピー
かねて私はコンピュータオーディオファイルの読者に、リッピングをすべてAIFFファイルで行うように推奨する記事を書いたことがある。これまでに述べたリッピング戦略マニュアルはこの以前に書いた記事を増強・拡大するものである。本リッピングマニュアルではすべてのアーカイブ用コピーをFLACフォーマットにすることを勧める。
作業用コピーのフォーマットはOSや再生用アプリケーションに依存する。アーカイブ用コピーをFLACとして保存することはデジタル保管の原理に適い、さらに将来にわたるフレキシビリティ、相互運用性、アクセス、有効性といったデジタルな持続可能性を保証する。なぜならFLAC(Free Lossless Audio Codec)はロスレスであり、音楽を16/44.1、1:1としてコピーすることができるからである。
FLACは芸術(音楽)作品をネイティブなフォーマットで保存したいというニーズにも応える。もちろんコンパクトディスク上の音楽はFLACではないのだが、抽出されたFLACファイルは全く同じ"bit for bit"なコピーをもたらしてくれる。
FLACフォーマットは高度な利便性を実現しており、実際に他のどんなフォーマットにもコンバートすることができる。FLACは将来が保証されているわけではないが、未来に耐えうると言うことはできる。他の非圧縮系または圧縮系フォーマットのどれよりもFLACは長くサポートされるだろう。もし将来的に非常にすぐれたフォーマットが誕生したとしても、FLACからそのフォーマットにコンバートするプログラムが提供される可能性は極めて高い。
このことはプロプライエタリフォーマット(訳註:特許権や著作権で保護された独自仕様のフォーマット)には当てはまらない。株主利益のために決定がくだされたら、たとえばアップルやマイクロソフトのことを考えてみれば、将来持ちこたえるかどうかは闇の中だ。いい悪いは別にしてこれが現実である。
FLACはまた、メタデータのサポートが他のどんなフォーマットよりも優れている。全てのタイプのメタデータがFLACファイルに埋め込み可能であり、FLACをサポートするほぼ全てのアプリケーションがこのメタデータを読み取ることができる(現在Songbirdはアルバムアートの読み取りに関して問題を抱えている)。
アプリケーションのFLACファイル読み取りに関する問題は些細なことだ。FLACはWAVやAIFFにはない標準規格を有している。
一例を挙げると、ファイルフォーマットのリサーチをしていた時、アプリケーション開発者の全員がFLACはプレイヤーソフトでサポートすることが簡単だと答えた。これらの開発者が言うには、WAVとAIFFはそれぞれ辻褄が合わないことをたくさん含んでいるということだ。
具体例を挙げるなら、ファイルヘッダが記述される方法について矛盾する部分があり、開発者としてはサポートするのに多大な困難を伴うという。WAVファイルについては実際に遭遇した事例が2つ思い当たる。PS AudioとBoulderはここ1年でついにReference Recordings HRxの24/176.4ファイルを再生することに成功した。開発が難航した一番の理由は2つの会社で共通するものだった。それはWAVファイルにファイルヘッダが書き込まれる方法の矛盾点に関連する問題であった。もちろんFLACにはこういった問題はない。
ファイルのフォーマット - 作業用用コピー
作業用コピーのファイルフォーマットはユーザー固有のニーズを解決するものであるべきであり、1:1の"bit for bit"なコピーであればオープンフォーマット(訳註:FLACのような)である必要はない。
ひとりの音楽愛好家、オーディオファイルとして私はロスレスと(または)非圧縮系フォーマットだけを推奨する。これから述べるのもこれらのフォーマットについてである。
フォーマットの選択はオペレーティングシステムと再生用アプリケーションの組み合わせに依存する。MACのOS Xのユーザーは作業用コピーをAIFFとしてリッピングするべきだ。AIFFはiTunesで有効なメタデータの埋め込みをサポートしており、コンパクトディスク上の芸術作品を1:1でコピーすることが可能である。
メタデータの適応範囲は決して広くはないが、AIFFは2、3のアプリケーションでは極めて使いやすいフォーマットだ。その他多くのアプリケーションでも少なくても再生は可能だ。なぜこの点に触れたかというと、モバイルデバイスやネットワークストリーミングデバイスで再生しようとファイルをあちこちに移動するユーザーのためである。AIFFはこういった状況でも真価を発揮する。
さらに、AIFFフォーマットは向こう数年間は変更が加えられないだろうと私は考えている。このことはALAC(Apple Lossless Audio CODEC)のようなコーデックには当てはまらない。
iTunesでALACファイルのプロパティを開くとメタデータの項目にエンコードに使用したコーデックのバージョンがリストされているのが見えるだろう。新しいiTunesがリリースされるたびにコーデックに変更が加えられているのだ。
その変更がいいものなのか、それとも悪いものなのか、無害なものなのか、といったことは誰にもわからないが、これまでに変更が加えられ、これからも変更されていくだろうということは紛れもない事実だ。後継バージョンと先行バージョンを比較するためにどのバージョンのALACをレファレンスとして使えばいいのかさえ私にはわからないのである。
個人的にはこのような比較は行ったことがないが、読者の中には新旧のALACを比較試聴して違いをレポートしている方がいる。都市伝説かどうかは別にしてこれは考慮に価することだ。
Windowsベースのコンピュータを使用しているユーザーには、作業用コピーのリッピングに関して妥当な選択肢が2つある。もしユーザーが埋め込み型メタデータの利用を最優先したいと思うなら作業用コピーをFLACにすることをお勧めする。再生用には非圧縮系ファイルを用いるという私の強い好みには反するが、埋め込み型メタデータの活用が重要であるならこの方法しかない。
もしユーザーが最高の音質を求めていて、作業用コピーのメタデータが失われる可能性が高くても構わないのなら、WAVをお勧めする。以前私はPC(訳註:Windows PC)でAIFFを使うように勸めていたので、この点に関しては前に書いた記事と異なっている。理由は、PCにおいてWAVは広範囲にわたってサポートされているからで、逆にAIFFのメタデータはほとんどサポートされていないし、PC上ではWAVを使うことが推奨されているためである。
PCにおいてベストのサウンドはWAVであると提案したことについては議論の余地はない。この結論に皆さんが自分でたどり着くように促すだけである。再生にWAVを使えばサウンドクォリティーが損なわれることはない、これが私の持論である。
WAVはAIFFと同様にファイルのポータビリティと相互運用性を備えている。WAVファイルを作業用コピーとして使うことに対してひとつ警告しておきたいのは、埋め込まれたメタデータのサポートが非常に限定されるので、最終的にはメタデータを見失ってしまうということである。
例えば、MediaMonkeyを使っているうちはメタデータとアルバムアートをWAVファイルと連携させることができる。だが、もし他のアプリケーションに切り替えたり、MediaMonkeyのデータベースが消失したり壊れてしまった場合には、メタデータは失われてしまう。
WAVファイルは埋め込み型メタデータをサポートしていない、ということはよく耳にすることだ。WAVフォーマットにはメタデータのための空きスペース設けられているという説があるが、これは100%正しくないと私は思っている。
埋め込んだメタデータとWAVファイルの辻褄が合わないことは何度か経験している。私がよく会うトラブルとしてはアルバムアートに関してだ。埋め込み方式にするか、連携するファイル(訳註:m3uファイルなど)にするのかは重大な懸案事項であり、軽々しく扱うべきではない。
ファイルのフォーマット - 編集済みコピー
編集済みコピーについては、非圧縮系であれロスレスであれロスする圧縮系フォーマットであれ、ユーザーが自由に選べばよい。
コンピュータオーディオファイル向けリッピング戦略は以下の4つのポイントによって決定される。「CDを正確にリップする」ということはひとつ目のステップであり、これに続いて、「信頼できるストレージメディア」、「将来性のあるフォーマットの選択」、「メタデータ」というステップがある。この戦略を自分のものにして、目標を100%達成するために手堅い方法論を構築していただきたい。
リッピング戦略の要旨
1. オリジナルと1:1のコピーを作るために16/44.1でリップすること。
2. アーカイブ用コピーと作業用コピーをリップし、CDは捨てないで保管すること。
3. 今現在のユーザビリティのため、そして将来的な復旧や内容確認のために、埋め込みメタデータを利用すること。
4. 将来のフレキシビリティと相互運用性のためにオープンなファイルフォーマットを使用すること。
リッピングの戦略と方法論 - 2 へ続く